栽培ハウスとその管理

    07/09/10


10.栽培ハウスとその管理

 チェリモヤは耐寒性が弱いので,我が国では沖縄や九州南部など,温暖な無霜地帯以外は冬季に寒害を起こす危険性がある。したがって,大概のところはハウス栽培が前提になる。だから,栽培に適したハウスの建設とその維持管理がチェリモヤ栽培の重要作業となる。また,通常の果樹では盛果期に達した果樹園にハウスを建設するが,チェリモヤは苗木や若木のうちからハウス栽培で始めなければならない。

  ハウスの型式と構造
 チェリモヤ栽培のハウスとして基本的な機能と構造をあげると次のとおりである。

 ◇保温性の高い構造であること。
 ◇換気や温湿度調節機能があり,高温や過湿障害のでない構造であること。
 ◇光透過性がよいこと。
 ◇天井高さは樹高よりも1m以上あること。
 ◇強風や降雪に耐えられる構造であること。
 一般的には,単棟の場合はトンネル型パイプハウスが,連棟の場合は鉄骨パイプハウスが比較的コスト安く建設できる。ハウスの型式と特質をあげると第4表のとおりである。

第4表 ハウスの型式と特質

型 式 地形適応性 棟高 建設コスト 被覆の手間 備考
トンネル型
パイプハウス
平坦地
緩傾斜地

(3m以下)
単棟
丸屋根型鉄骨
パイプハウス
平坦地 連棟・単棟
両屋根型
鉄骨ハウス
平坦地 連棟・単棟

果樹施設栽培指針(和歌山県)

hous3.gif (10769 バイト)

hidarisankaku.gif (913 バイト)丸屋根型鉄骨パイプハウス


  被覆資材
 ハウスの保温性や暖房効率を高めるには被覆資材の特性をよく理解して使用することが大切である。被覆資材としては,硬質プラスチック板,硬質フィルム,および軟質フィルムがある。

 塩化ビニル,ポリエチレン,ポリオレフィンなどの軟質フィルムは,展張が容易で,価格も安いから各種のハウス用として最も広く利用されているが,塵埃の付着によって透光性が低下し易く,結露し易いほか,耐久性に乏しい。近年,結露や防塵性は改良されてきているが,光透過性が低下するので天井部は1〜2年で張り替える必要がある。

 硬質フィルムは,周年栽培用ハウスの被覆資材として,3〜5年間の耐久性があり,結露防止剤を処理すれば内部の付着水滴を少なくすることができる。

 硬質板は,硬質フィルムよりも耐久性がよく,8〜10年間使用できるが,長年の使用によって変色や塵埃の付着で光線透過率が低下してくる。

 ハウスの保温性を高める資材として,発泡樹脂シート,アルミ蒸着フィルムなどがあるが光透過性が悪いので,サイドや妻側の内張りとして用い,日中には解放できるようにするか,ハウスの北側,西側など,風当たりの強い側に,または妻面に固定張りにしてもよい。このほか,ハウスの内張りやカーテン用としては,ポリエチレン,塩化ビニル,酢酸ビニルなどの軟質フィルムが適している。


  暖房設備
 加温栽培ではもちろん,無加温栽培の場合でも2重被覆だけでは外気温度より2℃くらいの保温効果しかないので,夜間に冷え込みの強いときには暖房設備が必要である。

 暖房方式や暖房設備の選定にあたっては,暖房負荷に対応できる能力のあるものを採用しておく必要がある。通常は,温風暖房機が広く用いられている。

 暖房設備の能力(暖房負荷)は,便宜的に次式で算出することができる。

最大暖房負荷(kcal/h)は,HTmax=AW・Kt(θin−θout)fw
 ここで,HTmax:最大暖房負荷(kcal/h)
     AW:ハウスの外壁面積(m2)
Kt:暖房負荷係数(Kcal/m2・h・℃)であるが,被覆資材とその被覆方法によって異なり,第5表のとおりである。
     θin:ハウス内部の設定温度(℃)
θout:外気の最低温度(℃)
fw :風速による補正係数で,2重張りハウスで風速が5m/Sec 以下の場合は1.0,1重張りハウスで風速5m/Sec以上の場合は1.1で計算すればよい。ただし,これはよく密閉されたハウスでの場合である。kaonki.jpg (8645 バイト)
 暖房機を選定するにあたっては,上記の最大暖房負荷のほかに暖房設備の配熱系統での熱損失量や予熱負荷,さらには暖房機の出力の経年的低下を加味して余裕のある能力のものを採用しておく必要がある。

温風式暖房機 migi.gif (915 バイト)

 

第5表 各種ハウスの暖房負荷係数 (日本施設園芸協会

被覆方法 被覆資材の種類 暖房負荷係数
(Kt.kcal/m2h℃)
一重被覆 ガラス
塩化ビニルフィルム
ポリエチレンフィルム
5.3
5.7
6.0
二重被覆 ガラス+ガラス
ガラス+塩化ビニルフィルム
2.0〜2.5
3.2
一重被覆+
一層カーテン
ガラス+塩化ビニルフィルム
塩化ビニルフィルム+塩化ビニルフィルム
塩化ビニルフィルム+ポリエチレンフィルム
3.0〜3.7
3.2〜3.9
3.9〜4.1
ペレットハウス 発泡スチロール小粒層 0.02

  フィルムの被覆と除去
 チェリモヤは霜害を受け易いので,11月中旬までにフィルムを展張する必要がある。とくに,外張りフィルムの展張は,季節風が強くなるまでに早めに行ったほうが作業もやり易い。風の少ない穏やかな天候を見計らって,早朝から午前中に行うのがよい。

 加温栽培ではもとより,無加温栽培の場合も2重張りによって保温性を高めることが重要である。

 なお,フィルムを展張すると日中にはハウス内が高温になるので,電気配線はもとより,換気扇や換気設備をまず完成させて試運転しておき,フィルム展張と同時に換気設備を稼働できるようにしておくことを忘れてはならない。

 5月には日中の外気温度が上がってくるので内張りフィルムを全開にするか,または除去し,さらに高温になる梅雨明け頃には外張りフィルムも除去する方が夏場の温度管理に都合がよい。

 天井の外張りフィルムを展張したまま,サイドや妻面フィルムを全開にして夏を越す場合は,天井部に遮光ネットなどを展張して高温化を防ぐ手立てが必要である。


  温湿度管理
 チェリモヤの生育適温は18〜25℃で,30℃以上になると新梢の生育はもとより,果実肥大も停滞する。また,35℃以上になると新葉に萎縮症状がみられる。樹は,適温の範囲では年中新芽を伸ばして生育し,開花もするが,この状態では低温に対して極めて弱い。休眠状態にあるときは,ある程度の低温に耐えるが,それでも−2℃に下がると葉が枯死し,−4℃になると枝枯れはもとより,幹の地際部まで枯死する。

 秋冬季といえども,日中には換気が少ないとすぐに25℃以上になるが,夜間に冷え込み,温度較差が大きくなると果実が裂果を起こす。したがって,着果している場合は最低温度を8℃以上に保ち,日中は15〜18℃で換気を図って高温化を避けるようにする。

 果実の収穫が済んだら,3月のせん定までは,最低温度を0℃以上に,日中は15℃程度で換気装置が作動するように設定する.換気温度を高く設定すると,ハウス湿度が高まり灰色カビ病が多発する.ただし,夕方はハウスを早めに締めて室温を十分高めてから日暮を迎えるようにすると夜間の冷え込みが緩和され,燃料費が節約できる。冬季,日の当たらない低温日には換気装置が稼働しないのでハウス内が多湿になり,湿度96%RH以上に長時間遭遇させると葉に灰色かび病が多発して落葉を起こす。湿度を下げるためには,気温が低くとも換気する必要がある。

 チェリモヤは,7℃以下の温度に積算50〜100時間遭遇すると自発休眠が完了するといわれているが,10月からでもせん定して加温すれば支障なく発芽,開花するところをみると,自発休眠があるのかどうかは疑わしい。

 無加温栽培では,3月にせん定,摘葉を行って発芽を促すが,最高温度は25℃を超えないよう換気で調節する。また,冬季の夜温は,0℃を下らないようにする。また,せん定,摘葉を行ってから数日間は,多湿にならないように留意し,十分換気して枝の切り口や摘葉痕を乾燥させる。せん定して,摘葉後直ちに潅水してハウスを締め切ると多湿になり,枝の切り口や摘葉跡に残った葉柄に灰色かび病が多発して枝の枯れ込みや発芽を損なう。防除の項でも述べるが,せん定,摘葉後は直ちに灰色カビ病の防除薬剤を散布し,1週間後に十分潅水して湿度を上げて萠芽環境を整える。

 3月に入ると夜間の冷え込みも和らぎ,最低温度も徐々に上がり,4月になれば夜温も10℃以上の日が多く,加温も不要になる.日中には温度が上がるので,換気装置は25℃に設定する。最高温度は27℃を越えないように注意し,換気にはとくに留意する。
 新梢の伸長,展葉がすすんで花蕾も日々に発育し,4月中下旬にもなれば開花がはじまる。開花期には,雌しべの乾燥を防止して受精効果を高めるために空気湿度を高く維持する。このため,晴天日には少量ずつ何回にも潅水するとか,ミスト装置で細霧を発生させて湿度を高めながら受粉を行うとよい。

syakonet.jpg (6793 バイト)

hidarisankaku.gif (913 バイト)遮光シートで高温化を防ぐ

 梅雨明けになると温度はさらに上がり,被覆資材を展張したままでは高温になり過ぎるので,被覆を除去して天井部は遮光シートに張り替え,高温化を防ぐようにする。遮光シートは,遮光率30〜40%程度のものが適している.


  強風,積雪対策
 ハウス栽培で最も神経を使うのは春一番の低気圧や台風など,強風によるハウスや作物の風害である。春一番の吹く頃はまだ気温も低いので,気象予報に留意して,いざというときには,ハウスを密閉して吹き込まれないように注意する。とくに,ハウスの出入り口やサイド換気,谷換気の開閉部が煽られ易いので,しっかりと固定する。もちろん,被覆資材の継ぎ目やマイカ線の緩みを点検して締め直しておく必要がある。

 サイドや谷部の巻き上げによる自然換気式ハウスでは,有圧換気扇を取り付けてハウス内空気を吸い出すと,内部が負圧になってフィルムが密着し,強風時に開閉部のばたつきが防止できる。

 台風時にフィルムを除去している場合は,チェリモヤが風害を受ける。枝が裂けたり,樹が倒伏するので,前もって支柱や枝の結束を行っておく必要がある。チェリモヤは強風に弱いので,ハウス全体に防風ネットを張っておくのがよい。防風ネットは網目4mm程度のものにして,カメムシ,コガネムシ,ヨトウムシの成虫などのハウス内への侵入を防止する。

 冬季に積雪があると,谷換気や天窓の作動に支障をきたすばかりか,長時間の積雪は日照を遮り,ハウス内の温度があがらなくなる。積雪の心配がある場合は加温機を作動させて5℃程度に加温するか,スプリンクラでハウス上に散水すれば積雪は防止できる。


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1.品種と栽培特性 2.育苗と植え付け 3.整枝せん定と枝管理
4.受粉の適期と受粉法 5.摘果と果実管理 土壌と養水分管理
7.栽培ハウスとその管理 8.病害虫の防除 9.生理障害と対策
10.収穫・出荷法 11.追熟と食べ方 12.参考資料・文献

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