病害虫の防除

                   (07/09/10)


 チェリモヤには病害は比較的少ないが,和歌山県果樹園芸試験場で7年間栽培したチェリモヤ園での害虫の発生を調査したところ,第6表のとおりかなりの数にのぼっている。このうちとくに防除を要したものは,カンザワハダニ,チャノキイロアザミウマ,ワタアブラムシ,クワコナカイガラムシ,ハスモンヨトウ,ナメクジ,などである。

 しかし,いまのところチェリモヤの防除農薬として登録された農薬は,ダニ防除用の「ダニトロンフロアブル」だけである。

 したがって、防虫ネットの展張などで害虫の侵入を防ぐ等、耕種的防除に力点を置いた防除が必要である。また、チェリモヤに対する農薬の適用拡大は緊急を要する。

  第6表 チェリモヤに寄生する害虫(和歌山県果樹園芸試験場)

害 虫 種 名 寄生時期 加害部位 寄生程度
カンザワハダニ 周年 葉,果実
ナミハダニ 周年 葉,果実
チャノキイロアザミウマ 5〜10月 葉,果実 やや多
シロオビアワフキ 5〜6月
ミドリヒメヨコバイsp 7〜9月
ワタアブラムシ 4〜8月 新梢 やや多
クワコナカイガラムシ 周年 枝,蕾,果実
コウモリガ 周年 枝,幹
チャハマキ 8月
シャクガsp 6月
クワゴマダラヒトリ 4月 新梢,葉
シロシタヨトウ 5〜6月
シロモンヤガ 5〜6月
ハスモンヨトウ 8〜9月 葉,果実 やや多
キバラモクメキリガ 5〜6月
ワタミヒゲナガゾウムシ 8〜9月 果実褐変部
ドウガネブイブイ 6月 花器
ナメクジ類 4〜6月 花器

 

  第6-1表 チェリモヤに被害を及ぼす病害

病害名 発病時期 罹病部位 被害程度
灰色かび病 周年 葉,枝,果実 やや多
炭そ病 果実成熟期 葉,果実 やや多
株腐れ病 生育期

 

 各種薬剤もチェリモヤで薬害の有無が確認されていないものが多いので,散布に当たっては薬害に注意する必要がある。

 展葉期の4月に実施した殺虫剤の薬害試験では,スミチオン乳剤,スプラサイド乳剤,エルサン乳剤,DDVP乳剤,ダーズバン乳剤,ミクロデナポン水和剤の各1,000倍,ローデイ水和剤2,000倍,マブリックEW剤の3,000倍では薬害が見られなかったが,アプロード水和剤1,000倍は新葉に激しい薬害が認められている。これ以外の農薬についても,25℃以上の高温な場合や多湿で散布薬液が乾燥しにくいようなときに薬害が発生する恐れがあるので,あらかじめ試験散布で安全を確かめてかかる必要がある.

農薬散布による薬害

マシン油乳剤の薬害

 


  灰色かび病

 多くの果樹や野菜類で発生するボトリチス菌による腐敗性の病気で,チェリモヤではせん定枝の切り口や摘葉した葉柄の残り部に発生して枝や芽の枯れ込みを起こしたり,葉に発生して葉枯れを起こして落葉する。秋冬期にもハウスを締め切ったままにすると多発し,落葉した葉柄跡に感染して枝枯れを起こす.低温季といえども極力,換気を図り,多湿化しないように留意する必要がある。

 開花の済んだ花弁にもよく発生するが,果実にまで感染して被害をだすことは少ない。 せん定や摘葉後は,枝の切り口や摘葉痕が癒えて乾燥するまで数日〜1週間は潅水をせず,換気をよくして多湿にならないよう留意する。

 ロブラール水和剤,ロニラン水和剤,トモオキシラン水和剤,スミレックス水和剤などが効果があるが、チェリモヤには登録されていない。

灰色かび病の被害葉

株腐れ病

  株腐れ病

 褐色腐敗病菌(Phytophthora citrophthora)による場合が多く,育苗中の実生の立ち枯れや若木のうちに幹の地際が腐敗して枯死することがある。

褐色腐敗病菌は有機物の多い土壌中にはどこにでも生息しており,泥水などの飛沫とともに感染する。
 実生の育苗には排水のよい砂土を用い,潅水にあたって泥が跳ね上がらないように籾殻や燻炭をマルチングする.チェリモヤの株際は常に乾燥状態に管理するため,敷草,敷ワラなども幹に接しないよう株際から30cm程度離しておく。褐色腐敗病菌には,デラン水和剤,デランフロアブル,トモオキシラン水和剤などが効果がある。しかし、これらも作物登録されていない。

 この他,オーストラリアではRhizoctonia solani,Sclerotium rolfsii ,Pythium spp.などによる実生苗の立枯病があげられている。


萎凋病

 バクテリア(Pseudomonas solanacearum)の感染によって起こる苗の立ち枯れや若木の株腐れである。この病菌は,ナス科の野菜によく発生するもので,ナス科の野菜を栽培した跡地に定植すると危険である。また,チェリモヤの間にナス科野菜の間作は避けるほうがよい。

 チェリモヤ実生の台木は比較的抵抗性があり,とくにホワイトの実生は抵抗性が強いとされている。この他, アーミラリア根腐病 があり,本病は,Armillaria luteobubalina菌による根腐れであるが詳しいことは不明である。


ハダニの被害果 hidarisankaku.gif (913 バイト)ハダニに犯された果皮に発生した炭そ病

  炭そ病

 炭そ病菌Glomerella spp.が幼果期に感染し,成熟期になってから果皮に病徴が現れる。とくに,収穫が遅れると病徴が顕著になり商品価値を損ねる。また,若い葉にも感染し,後に薬害や風擦れなど,葉が何らかの損傷を受けた場合に発病して落葉を起こす。


  ハダニ類

 チェリモヤを加害するハダニ類には,カンザワハダニ,チャノホコリダニなどが確認されている。ハウス栽培ではハダニの加害は周年にわたり,カンザワハダニの加害を受けると葉が黄変して落葉するほか,果実に寄生すると果皮が褐変して商品価値を損なう。

 カンザワハダニにはケルセン水和剤,ダニトロンフロアブル,サンマイト水和剤,ピラニカ水和剤などが効果があるが,チェリモヤに登録されているのは、ダニトロンフロアブルのみである。

 薬剤抵抗性の発達で効果の低下している場合があるので注意する必要がある。薬剤抵抗性ダニを少なくするには,秋〜冬季,とくにせん定,摘葉後にマシン油乳剤を散布するのがよい。また,せん定や摘葉した枝葉は集めて焼却する必要がある。

ハダニ被害葉

アザミウマ類の被害

 

 

 

 

新梢と葉脈の中肋が茶褐色に変色している

 

チャノキイロアザミウマ

 成虫で越冬し,4〜5月の展葉間もない葉に寄生することもあり,7〜9月に多発し,秋遅くまで加害する。加害されると,葉の中肋が茶色に変色するほか,果実に寄生すると果皮が褐変する。

 本虫にはオルトラン水和剤,スプラサイド乳剤などが効果があり,その他多数の薬剤が効果があるが,作物登録されていない。

 この害虫は,付近にあるイヌマキ,サンゴジュ,イスノキ,チャなどで繁殖するので,近辺にあるこれらも併せて防除する必要がある。


  アブラムシ

 新葉の展葉し始めた頃から局部的に発生し,果実にも寄生する。多発すると煤病を併発して果実を汚すので,発生をみたら初期に発生部位だけ防除すればよい。スプラサイド乳剤,同水和剤,オルトラン水和剤が効果があるが、これらも作物登録されていない。


  クワコナカイガラムシ

虫体に白い粉を被ったような害虫で,枝,蕾,果実に寄生し,多発すると煤病を併発して脱皮殻が果皮の間隙に残り,商品価値を損なう。6月と8月の2回に幼虫が発生する。

 4月、発芽前にマシン油乳剤60倍液を散布すると効果がある。

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老齢幼虫


ヨトウの食害で裂果

 

 

 

 

uesankaku.gif (911 バイト)ヨトウの幼虫に食害され,果実肥大盛期になって裂果した果実

ヨトウ類

 ハスモンヨトウ,シロイチモジヨトウなどが新芽や果実を加害する。果実を加害されると成熟期になってから裂果を起こす。

 最近,これらヨトウムシは薬剤抵抗性が発達して幼虫が大きくなると防除が困難であるので,若齢期の防除に心掛ける必要がある。

 シロイチモジヨトウには性フェロモン剤(ヨトウコン-S)による交尾交信撹乱が効果がある。また,ヨトウガがハウス内に飛び込まないように防風をかねて4mm目程度のネット被覆するのがよい。


 ナメクジ

5月から6月にかけて,新芽や花蕾に寄生して食害し,被害をだす.ナメトールなどの駆除剤が効果がある.
米糠に殺虫剤を混合して水で練り合わせ,指先程度の団子にして,夕方地面に置くと効果がある.

ナメクジ
uesankaku.gif (911 バイト)米糠で誘引して退治したナメクジ

ご覧になりたいページ見出しをクリックして下さいsita.gif (910 バイト)

1.品種と栽培特性 2.育苗と植え付け 3.整枝せん定と枝管理
4.受粉の適期と受粉法 5.摘果と果実管理 土壌と養水分管理
7.栽培ハウスとその管理 8.病害虫の防除 9.生理障害と対策
10.収穫・出荷法 11.追熟と食べ方 12.参考資料・文献

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